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     テーマ 142 部署内では腐ったリンゴをつくらない
       

■腐ったリンゴの実験

オーストラリアのサウスウェールズ大学で
組織行動学を研究する

ウィル・フェルプスという方が行った実験に
「腐ったリンゴの実験」というものがあります。

その実験というのは、
組織に悪影響を与える仕掛け人を
プロジェクトチームに送り込むというものでした。

下記の3つのタイプの人間がチームのパフォーマンスを
どの程度下げるのか見るために、

ニックという男性を投入し、
それぞれのタイプを演じてもらいました。

1.性格が悪い人(攻撃的、反抗的な態度をとる)
2.怠け者(労力を出し惜しむ、手を抜く)
3.周りを暗くする人(愚痴や不満ばかり言う)

実験結果としては、ニックの悪影響は強烈で、
どのチームも約40%生産性が低下しました。

「性格が悪い人」「怠け者」「周りを暗くする人」の
どのタイプを演じても、
生産性の低下の大きさはだいたい同じだということです。

約40%生産性が低下した原因は、
組織の中に腐ったリンゴ(3つのタイプ人間)が
増えるとそれに同調する人間が増えるということです。

愚痴や不満ばかりを言っている人間がいると、
同じく愚痴や不満ばかりを言う人間が増える。

怠ける人間がいると、周囲も一緒に怠けだすということになります。

■腐ったリンゴを無害化する人間

「腐ったリンゴの実験」の中で、
ニックの悪影響を受けないチームが一つだけありました。

それは、ある1種類のタイプの人間によるものでした。

腐ったリンゴを送りこんでもそのタイプの人物がいると、
生産性がまったく落ちませんでした。

腐ったリンゴを無力化できるタイプの人間とは、
「ニコニコと笑顔で人の話を聞き、
 そしてブレずに目標に向かって取り組む人間」でした。

腐ったリンゴを無力化できるタイプの人間は、
物静かで口調は穏やかな人物でした。

ニックが嫌味を言ったり、
チームの誰かに暴言を吐いたりすると、

その人物は少し身を乗り出して
みんなに笑顔を振りまいたとのことです。
そのおかげで場の緊張は和らぎました。

さらに彼は雰囲気の悪くなった会議などでも、
チームメイトに簡単な質問するなどして発言を促し、
熱心に聴いていたとのことです。

この人物の行動は、
チームにこの場は安全だという
「心理的安全性」を与えていたことがわかりました。

心理的安全性は、
目的達成のために、チームのなかでより率直に
ものがいえる状態をつくるというものです。

腐ったリンゴを無力化した人物は、
ニコニコと話を聞きながら、

ブレずに目標に向かうことで、
この組織には攻撃性がないことを示し、

自分を守るよりも仕事に向かえる状態を
つくりあげたということです。

■部下に期待していること、部下が希望していることを
 上司の正しい言葉と行動で実現する

実務の上では、部下の方は、
下記のような希望を誰しもが持っています。

「いい仕事がしたい」
「仕事を通して成長していきたい」

このような希望が、何年たっても叶わないため、
腐ったリンゴのような状態になるのかもしれません。

一方、上司の方は、
どなたも部下の方に下記のような期待を持っています。

「部下にいい仕事をしてもらいたい、成果を出してもらいたい」
「早く成長してほしい」

部下を育成するとは、
部下が希望していること、部下に期待していることを、

上司がきちんと整合させ、納得し合い、
具体的計画に落とし込むことといえます。

実際の職場で、
上司の期待と部下の希望を実現させ、
腐ったリンゴをつくることもなく、

また、心理的安全性を持った部署をつくるには、
上司の正しい言葉と行動が必要です。

上司の正しい言葉と行動が
部下の言動を変え、成長へ導きます。